戦闘機パイロットの夢を追いかける青春物語

戦闘機パイロットになる夢を追いかける青春物語

防衛大学校物語 第38 -それでも規則違反はやめられない-

防大生には都合のよい言葉がある。

「バレなければ何をしてもいい」という言葉だ。

だから喫煙や無断私服外出が後を絶たない。

「バレたら潔く責任をとる」という言葉が都合よく省略されてしまっているのだ。

ある休日、K学生と「ジョギング行ってきま〜す」と言って、小原台の丘から浦賀方面に下った。

すぐに住宅街に出る。

住宅街の中に「あひる」という小さな喫茶店があったので、そこに2人でジャージ姿のままで入った。

テーブル席に陣取るとピザと瓶ビールを注文した。

もちろん一学年は飲酒も認められていない。

カウンターの中には喫茶店の美人ママと母親似の綺麗な女子高生がいた。

店主にはわれわらが防大生だとバレバレだったに違いない。

ビールと美人親子。

束の間の娑婆を満喫した。

これに後日談がある。

26年ぶりに一人で「あひる」を訪れた。

カウンターの中に年配の女性がいた。

すでに熟女を通り越していたが、若い頃はきっと美人だったに違いないという風貌だった。

あの時の美人ママだった。

自分が防大一年生時にジャージ姿で訪れたこと、その時、美人の親子がいてキュンとしたことを告げた。

あれから色々あったのだろう、とても懐かしそうだった。

そして私は、あの頃と同じピザとビールを注文した。