防大生には都合のよい言葉がある。
「バレなければ何をしてもいい」という言葉だ。
だから喫煙や無断私服外出が後を絶たない。
「バレたら潔く責任をとる」という言葉が都合よく省略されてしまっているのだ。
ある休日、K学生と「ジョギング行ってきま〜す」と言って、小原台の丘から浦賀方面に下った。
すぐに住宅街に出る。
住宅街の中に「あひる」という小さな喫茶店があったので、そこに2人でジャージ姿のままで入った。
テーブル席に陣取るとピザと瓶ビールを注文した。
もちろん一学年は飲酒も認められていない。
カウンターの中には喫茶店の美人ママと母親似の綺麗な女子高生がいた。
店主にはわれわらが防大生だとバレバレだったに違いない。
ビールと美人親子。
束の間の娑婆を満喫した。
これに後日談がある。
26年ぶりに一人で「あひる」を訪れた。
カウンターの中に年配の女性がいた。
すでに熟女を通り越していたが、若い頃はきっと美人だったに違いないという風貌だった。
あの時の美人ママだった。
自分が防大一年生時にジャージ姿で訪れたこと、その時、美人の親子がいてキュンとしたことを告げた。
あれから色々あったのだろう、とても懐かしそうだった。
そして私は、あの頃と同じピザとビールを注文した。