戦闘機パイロットの夢を追いかける青春物語

戦闘機パイロットになる夢を追いかける青春物語

防衛大学校物語 第93 -パイロットの卵たちのたまり場-

基地から最寄りのJR藤枝駅前の飲食ビルの2階にピアノBARがあった。

私たちコースB(ブラボー)は、週末になるとよくそのピアノBARに集った。

お目当ては、バイトとしてカウンターで働いていたA嬢だった。

私たちより少しだけ年上のA嬢は、気さくな感じでいつも私たちの話に耳を傾けてくれた。

誰が手を出すわけでもなく、コースBのマドンナ的存在だった。

しかし、どうやら同期のH3尉がA嬢に熱をあげたようだった。

H3尉は、1人でピアノBARに通うようになっていた。

そんな下世話な噂はすぐに広まり、飛行隊長T2佐の耳にも入った。

ある日、H3尉はT隊長に呼び出され、指導を受けるハメになった。

防大出身のエリートパイロット候補生が、水商売の女に入れ込んではいけない、ということだった。

当時は、公私の区別なんて無いに等しく、上司の指導は時として私的な事にまで及ぶことは普通だった。

私たちは、女性の事で隊長から指導を受けたH3尉を面白おかしく茶化した。

私たちコースBが卒業した後、怪我で次のC(チャーリー)にコースダウンした同期のW3尉が、邪魔者がいなくなった後、A嬢と楽しく過ごしているらしいという噂が聞こえてきた。

単なるやっかみなのだろうか?

真相は闇の中である。