関東リーグ戦が終わり、シーズンオフの休日にアメフト部の紅白戦が行われることになった。
私はどうしてもその日の練習に参加したくない理由があった。
午後から横浜関内のディスコで中隊主催のダンスパーティ、通称「ダンパ」が開催されることになっていて、どうしてもそれに参加したかったのだ。
紅白戦の前半で見事なタッチダウンパスをキャチして活躍した私は、とんでもない行動に出る。
レシーバーの相棒であるF君に「ちょっとトイレ行ってくる」と言い残して、そのままシャワーを浴びて外出してしまったのである。
その日、私は心の底からそのダンパを楽しんだ。
しかし、私が「脱走」したことはすぐにチーム内で明らかになる。
紅白戦後、鬼コーチが私の同期をグランドに残し、連帯責任として彼らに特訓を課したのであった。
同期にとっては訳も分からなかったに違いない。
翌日の練習が始まる前、居室までアメフト部の先輩が迎えに来た。
「監督がすごく怒っている、きちんと説明しなくてはならない」と。
グラウンドに行くとチンピラ風の監督は私に一言だけ言った。
「言えない用事かい?」
「はい」と私は素直に答えた。
次の瞬間、2つ、3つだったろうか、監督から見事なストレートパンチを顔面に食らった。
私は思わず後ずさりした。
それ以降、何事も無く私は普段どおり練習に参加し続けた。
男心を分かっている監督に感謝しかなかった。
しかし、連帯責任で特訓を受けさせられた同期からは今でもあの時のことを悪く言われる。