戦闘機パイロットの夢を追いかける青春物語

戦闘機パイロットになる夢を追いかける青春物語

防衛大学校物語 第52 -自動車学校で吠える-

千歳基地での部隊実習期間中、私は土日になると電車で実家に帰省していた。

そして地元の自動車学校に通っていた。

部隊実習が終わると2週間の夏季休暇となるので、そのまま地元の自動車学校に通えることになる。

教習は順調に進んだ。

防衛大学校の学生が教習場に通っていることは教官にとって珍しかったようだ。

田舎の人から見ると防大生は「将来のエリート自衛官」という存在だった。

よく教官たちから防大のことについて聞かれた。

教習場内で初めて単独走行の時だった。

普段やかましい教官が横にいないため清々した気分で運転していた。

しかし、坂道発進で少しまごつくと、車の中のスピーカーから教官の口やかましい指導が聞こえてきた。

どうせ教官には聞こえないだろうと思い、「うっせぇーな、この野郎」と怒鳴ってしまった。

教官側にはこちらの声も聞こえていることが後で分かって恥ずかしい思いをした。

「エリート」らしからぬ言動は教官を驚かせたかもしれない。

もう数日あれば、卒業できるくらいだったが、期間が足りないことから仮免許を取ったところで転校することにした。

2週間の夏休みを終え、アメフト部の夏合宿のため防大に帰校した。

以降、休日を利用して久里浜自動車学校に通い始めた。

土地勘が全くない神奈川の道には苦労したが、その秋、晴れて自動車免許を取得した。