一応、理工学部機械工学科専攻である。
2年時にはプレス機で小さな柵を作ってそれを舎前の花壇に設置したり、鋳型で用途不明の万力を作ったりした。
工業高校かよ、って思った。
4年になると卒業研究がある。
先輩の紹介で簡単そうなテーマの卒業研究にありつくことができた。
指導する教授はいつも白衣を着ていて見るからに穏やかそうな人だった。
5㎜立法にカットした特別な砥石に電極を張り付け、機械でものすごい圧力をかける。
その時の砥石の歪を計測するという研究である。
それが何のためになるのかもよく知らなかった。
もともとアメフトだけやっていればそれでいい、勉強で時間を取られ、大変な思いをしたくないために機械工学を専攻したのだ。
卒業研究は、ただ教授の言うとおりに作業をこなしているだけ。
気付くといつも定時にユニフォームを着てアメフト場に立っていた。
研究は私の他によっちゃんと山ちゃんの3人による共同で実施することになっていた。
しかし、この2人が私以上にやる気が無かった。
午後の課業時間が始まっても居室から出てくる気配がない。
やむを得ず、2人の部屋に寄って「卒研いこー」って誘う。
部屋のドアを開けると、昼間っからカーテンを閉めた薄暗い部屋の中にファミコンのコントローラーを持った二人が「ぬっと」振り返えり、私を見る。
「しょうがないなぁ。行くかぁ」っと言って二人はようやく卒業研究に行く準備をするのが習慣だった。
いったい何の研究だったんだろう?
未だに謎である。