毎年、幹部候補生学校では調理実習の短大生を受け入れている。
昼食のため食堂に行くと、調理場の方にいつもと白衣をまとったいつもとは違う若い女の子たちがいた。
こうなったらもう気が気でない。
候補生たちは、食事を食べつつも視線は、調理実習の短大生たちに釘付けである。
短大生たちも、次々食堂に来る制服を着た若い候補生たちを意識しているようだった。
パーティションで仕切られ、食事を提供するためわずかに開いている隙間を通して、お互いの視線がバチバチ交錯していた。
ここは動物園か。
奈良に来てから、関西はとにかく面白い人がモテると学習した私は、パーティションの隙間から差し出された食事を貰うときに、そのわずかな隙間に頭を突っ込んで「いただきまーす」と元気に彼女たちに声をかけた。
そんな大胆なことをしても私は恥ずかしいとは思わなかった。
若気の至りか。
その後、彼女たちに声をかけるチャンスをうかがっていた。
彼女たちは課業終了後になると決まった時間に食堂から基地の正門の外にあるバス停に向かって集団で基地内を移動する。
このことを日ごろから観察していた私と同期のK候補生は、ある日、彼女らがバス停に移動したのに合わせて、自分たちもダッシュでバス停に向かった。
作戦は見事大成功。
バスの中で彼女らに声をかけ、私たちは仲良くなった。