戦闘機パイロットの夢を追いかける青春物語

戦闘機パイロットになる夢を追いかける青春物語

防衛大学校物語 第140 -飛行隊ごと引っ越し-

飛行隊ごと青森県三沢基地に引っ越しになることは一年ほど前から決まっていた。

このため私のような後席操縦者の前席転換訓練はパタリと止まってしまった。

新田原基地で同期のT君が前席転換訓練でアンコントロールに陥り、緊急脱出するという事故が起きた。

事故調査では長い後席期間も腕が鈍るため課題であると指摘していた。

それを目にした私は、よっしゃー、これで前席転換訓練が始まる、と内心思ったが、私の前席転換はいつまでも始まることは無かった。

一年後にみんなで三沢基地に引っ越しすることがわかると、独身パイロット たちの対応も様々だった。

今、付き合っている女性との交際が終わってしまうのでは?と嘆く者もいれば、女性と上手く別れる口実にもなると異動を悪用する者もいた。

引っ越しが近づいたある日、私は、時々アメフトの練習に「同伴出勤」していたチアリーダーコと会った。

そして、こともあろうか、そのコから「私は三沢について行けない」と切実に切り出された。

私はそのコに三沢に一緒に来てほしいなんて言った覚えはなかった。

それどころか私は三沢に行ったら千葉のMちゃんとの結婚を考えていた。

多分、以前、酔ってチアリーダーのコに「一緒に来てほしい」などと軽々しく言ったに違いなかった。

兎にも角にも、こうして私の小松での独身貴族は終わりを迎えた。

若手パイロット たちはそれぞれ後ろ髪引かれる思いでみちのくへ車を走らせた。