戦闘機パイロットの夢を追いかける青春物語

戦闘機パイロットになる夢を追いかける青春物語

防衛大学校物語 第163 -ラストフライトと旅立ち-

本来は編隊長錬成訓練が始まる前には編隊長としての知識技能はある程度、備わっているのがベストだった。

しかし、長い間、後席で看取り稽古ができたにもかかわらず、いざ自分でやってみると編隊長になれるかどうか全く自信が無かった。

そしてついに最終チェックの日を迎えた。

このフライトは4月から幹部学校に入校する私にとって飛行隊でのラストフライトにもなった。

チェッカーはK3佐である。

私とは個人的に親しい仲だったが、編隊長資格だけは僚機の命に関わるものなので温情で合格にはしないことは明らかだった。

僚機を連れて空域でのミッションを終え、編隊でわずかな雲の隙間から雲下に出た。

はるか向こう側にかすかに見える飛行場の上に雲の隙間から漏れる太陽の日差しがまるで御光のように降り注いでいた。

私は「勝った」と思った。

あとは着陸だけを決めるだけである。

17才の時に戦闘機パイロットを目指して、ずっとその目標を追いかけてきた。

私はついに戦闘機パイロットなるという目標を達成するのである。

着陸後、K3佐から「合格」の結果が伝えられた。

パイロット としては、編隊長になってからが一番楽しい時であった。

しかし私はこれで一旦飛行隊から離れ、隊長などになるための勉強や中央で業務を経験することになる。

引っ越しを終え、東京に向けて三沢市周辺の田舎町を車で通り過ぎながら私は思っていた。

「7年間に及ぶ飛行隊での生活は決して満足できるものでは無かった。必ず飛行隊長で戻って来る」って。

しかし、この時、私にとってこれが戦闘機を操縦する最後の機会になることは、まだ知る由も無かった。