戦闘機パイロットの夢を追いかける青春物語

戦闘機パイロットになる夢を追いかける青春物語

防衛大学校物語 第153 -3つの航空事故の記憶③その4-

「1機がまだ帰ってきていない」

「すぐにモーボに行ってくれ!」と隊長は私に指示した。

大変なことが起きたかもしれないと思った。

その機に誰が搭乗していたのか知りたかった。

直ぐに、昨晩、千歳で一緒にジンギスカンを食べに行った友人のS2尉だと分かった。

私は急いでモーボに行くと、無線を開設するとともに、一生懸命、肉眼で海の方向を探した。

たまに夜の海上を通過する航空機の灯を見つけるが、それは別の航空機のものだと分かり落胆した。

ちょっと手間取ったけれど、結局無事帰ってくるはず、と祈っていた。

時間が経過し、事故が起きたことが決定的となった。

不思議なことが1つあった。

今回の千歳から帰投する10機のうち、私が一番若い前席パイロットだった。S2尉は私の次に若いパイロットだった。

夜間、雲中という難しい条件での帰投で、一番技量未熟な私ではなく、その次に若いS2尉が事故に遭ったのだ。

夏から続く三沢基地における一連の航空事故(隣の飛行隊の事故、向かいの米軍の事故、そして今回の自分の飛行隊の事故)で、気づくといつも私はモーボにいた。

神様が「お前は飛ばないで地上にいろ!」と私に命じていたのだろうか?

事故発生から数時間がたち、時刻が夜中近くになったため、飛行隊のメンバーは自宅に帰るよう指示された。

車を運転して官舎へ帰る私は半べそをかきながら「何が自衛官だ。国を守るとか偉そうなことを言っておきながら、自分は友人一人の命すら守れなかったではないか。友人の奥さんと奥さんのお腹にいる子供の幸せさえ守れなかったではないか。」と自分を責めた。