戦闘機パイロットの夢を追いかける青春物語

戦闘機パイロットになる夢を追いかける青春物語

防衛大学校物語 第165 -残念な話-

指揮幕僚課程を1回目で合格した、いわゆるCS「一年生」である防大同期生は7名くらいいた。

この中に防大時代、タイ王国からの留学生として一緒に学んだS少佐がいた。

彼らは防大卒業後、タイに帰国し、タイ空軍で軍人としての経歴を歩んでいた。

今回、CS留学生として再度訪日し、一緒に一年間学ぶことになったのだ。

私たち同期生より4歳年上だったため、タイ空軍での階級昇任も私たちよりも早く、すでに少佐になっていた。

S少佐は、私が一年生の時同じ小隊(クラス)で、苦楽をともにした仲だった。

日本語もままならない彼らにとって防大一年生時の「じごき」に対して、私以上に苦労したかもしれない。

また、防大時代、同期の中には、タイ人留学生を中傷したり陰口をたたく者も少なくなかった。

今回のCS合格者の同期の中には、そのような者が含まれていた。

とても残念なことであるが、彼らはCS期間中も時々、タイ人留学をからかうような態度をとっていた。

そのような態度は、必然的にS少佐にも伝わるようである。

私は、特にS少佐と仲良くしたわけではないが、CS卒業時に彼は私にタイ空軍のバッジを記念としてくれた。

バッジを手渡された瞬間、私は「お前だけは違う」とS少佐が言っているような気がした。

つまり、偏見や差別なくS少佐と接したことに対する謝辞を私は感じた。

将来、航空自衛隊の要職で活躍することが期待されているCS学生であるにも関わらず、相変わらず外国軍人を見下すような学生がいたこと自体、同期として恥ずかしく思った。