学期の集大成として学生は「期末試験」を受ける。
試験科目はいわゆる小論文だが、日本人教官の私にとってこれが厄介だった。
手書きなのでとにかく字が汚い。クラスに一人くらいは何て書いてあるか一文字も解読できない答案があるのだ。
他の米軍教官に見てもらってもよく分からないという。
そんな答案は、知識がないから読めないような文字で日本人の教官を惑わそうとしているに違いないと判断し、とりあえず「C」の成績を付けて返す。
日本の学校との違いは、答案を返却後、自分の成績に抗議してくる学生がいることである。
それも成績が良い学生に限ってクレームを付けに来る。
ある、白人のきれいな学生が私の部屋に来て「なぜ私の成績がAではなくB+なのだ?」と抗議をしにきた。
Cを付けた学生は絶対にAではないと自信を持って言えるが、AとB+の差異は感覚的な者だった。
しかし、教官として軽々に成績を変えることはできない。
抗議してきた彼女に「なぜ君の成績がB+で、どうすればAになるか」をつたない英語で一生懸命説明してあげる。
彼女も、あれこれ手法を使って自分の考えを主張する。
その中には「あなたは日本人で英語がネイティブではないから、私の文章の良さが分からないんだ」というような差別的なことを言われたこともある。
最終的には、「納得がいかない」と言いながらも彼女は私の部屋をあとにする。
私は最後に慰めの言葉を彼女にかけてあげる。
「君は普段グループワークなどでリーダーシップを発揮しているのを私は見ている。軍人にとってそうい姿勢が大事である。これからもリーダーシップを発揮して頑張れ」と。
そういうと彼女は「じゃ、もっとリーダーシップを発揮したら良い成績をくれるか?」と彼女は言い放って私の前から去った。
とてもつらい体験だった。