戦闘機パイロットの夢を追いかける青春物語

戦闘機パイロットになる夢を追いかける青春物語

防衛大学校物語 第193 -板門店見学の想い出-

指揮幕僚課程学生たちの担任の先生となった。

自分が学生の時は無かったが、今は指揮幕僚課程に海外研修というものがある。

今年は、韓国研修だった。

とはいっても観光地を回る訳ではない。

韓国空軍や合同参謀本部などの部隊見学と韓国空軍との交流などが主な目的である。

その中で、南北を隔てる「板門店」の見学が含まれていた。

一般人も観光として板門店の見学はできることに少し驚いた。

韓国側から板門店の中に入れる時間が決まっていて、私服に着替えた私たち指揮幕僚課程研修団一行は、国連軍兵士のエスコートで板門店の中に足を踏み入れた。

中央に置かれた机の半分から向こうは北朝鮮の敷地ということである。

その時、窓の外に気配を感じた。

窓の外を見ると、あの大きな制帽を被った北朝鮮軍兵士が我々の方をのぞき込んでいるではないか?

距離にして2メートルくらい。

ゾッとした。

しかし、その兵士の視線はどうやら我々の方に向けられているのではないことが分かった。

我々をエスコートしてきた国連軍兵士と、いわゆる「ガン」の付け合いをしているのである。

国連軍兵士は、若い米兵だった。

米兵は、仁王立ちのポーズで「なめんなよ」と北朝鮮軍兵士をにらみ返す。

私は怖くなり、思わずその若い米兵の後ろに隠れてしまった。

日米と北朝鮮の縮図がそこにあるような気がした。

日中、板門店で少し緊張感を味わった私たち研修団一行は、その後、ソウルの夜を満喫した。