先輩の職場復帰が順調に進む中、いい知らせが届いた。
他基地の部隊で先輩の異動を受け入れるというのである。
メンタルダウンした者を受け入れてくれる部署はほとんど無いのが現実である。
先輩の職場復帰を監督していた私にとっても嬉しい申し出であった。
しかし、ある日、M3佐が調子が悪いので少し休みたいと言ってきた。
私は動揺した。
ここで休んでしまうと、異動の話も無くなってしまうからだ。
先輩を上手く職場復帰させなければという責任感だけでここまで来たが、私はどうしたら良いか分からなくなってしまった。
部長室で部長に私の気持ちを吐露したとたん、私の頬を大粒の涙が伝った。
そんな私を見た部長は優しく助言してくれた。少し肩の荷が降りた感じがした。
私は、M3佐と面談を行い、ある部隊から異動受け入れのオファーが来ている。今、休んでしまうとその話も立ち消えとなってしまう。
と正直に話した。
私は「どうしますか?」と聞くと、M3佐は休まずに、異動まで頑張ると言ってくれた。
それから数ヶ月後に先輩は、無事異動して行った。
M3佐は、私のこれまでの心配なんて意に介さずという感じだった。
しかし、M3佐の職場復帰の責任を果たした私は内心ほっとした。
先輩のために涙した自分の責任感の強さは自分でも意外で誇らしかった。