戦闘機パイロットの夢を追いかける青春物語

戦闘機パイロットになる夢を追いかける青春物語

防衛大学校物語 第218 -課内バンドの功罪-

ギターを習いに行って1年以上がたち、その腕前もだいぶ上達すると、人前で披露したくなるのは性というものである。

課員と雑談していると、楽器を演奏できる者もいるらしいことを知った。

そこで、課内でバンドを組んで、部の忘年会で演奏を行うことにした。

パワハラだ、セクハラだ、という時代に、課員でバンド的な活動をして融和団結ぶりをアピールしたいという個人的な気持ちがあった。

ギター、ドラム、エレクトーン以外は、皆、歌い手である。

人前で歌なんて唄いたくない者もいたに違いない。

今思うと、単に自分の趣味を課員に強要したに過ぎなかった。

それでも、決して若くない課員たちは積極的に参加してくれた。

中でも、年齢もさほど変わらない部下のおじさんパイロットたちはノリノリで歌パートを担当してくれた。

若い女性隊員は、バンドの華として重要だったが、その彼女も渋々、参加してくれた。

バンドの練習が思い通りにならない苛立ちから、課員たちと仕事で上手くいかなくなる事もあった。

それでも練習は、週に一度、基地内にある物置き部屋に集まって行った。

休憩時間の課員との会話は、専ら、音階やリズムなどの話ばかりになった。

音楽に関しては課長の私の方が経験が浅いので、部下に指導される事も多々あった。

そして部の忘年会の日、課内バンドはデビューした。

本番での高揚感は忘れられない。

練習で部下たちと仲たがいしたこともあり、

軽々しく職場バンドなんて口に出すべきでないことも知った。

こうして前代未聞の課内バンドの幕を閉じた。