戦闘機パイロットの夢を追いかける青春物語

戦闘機パイロットになる夢を追いかける青春物語

防衛大学校物語 第81 -パイロット要員になれるか?-

9月に入りいよいよ幹部候補生課程の終わりが近付いてきた。

課程修了を目の前にしてビッグイベントが待ち構えていた。

それは職種決定である。

思えば、高校生の頃に航空自衛隊の戦闘機パイロットのパンフレットを見て、パイロットに憧れ、パイロットになることを夢見てここまで来た。

航空学生3次試験不合格というハンデを抱えたまま、防大における航空要員を希望し、パイロットになるための僅かなチャンスに賭けた。

視力を落とさないために本を読む時はいつも明かりをつけるなど、細心の注意を怠らなかった。

そのすべての運命が今日、言い渡される。

会議室のような部屋にひとりづつ入室し、中隊長から直々に職種が言い渡される。

私の番が来た。

もう覚悟はできている。

入室して中隊長の前に正対する。

そして中隊長が私に対して宣告する。

「○○候補生、操縦」

(やった!)

すぐさま私は「○○候補生、操縦」と大声で復唱しなければならなかった。

私は念願のパイロット要員になれたのである。

会議室を出ると、私は喜びをかみしめた。

その一方、パイロットを熱望していたにもかかわらず、全く違う職種を言い渡された者がいた。

それを大声で復唱しなければならない。

希望通りパイロット要員になれず、会議室の外で涙を流している者たちの姿を見た。

残酷な儀式である。

兎にも角にも私はパイロット要員になることができた。

しかし、ようやく戦闘機パイロットの入り口に立つことができただけである。

これから振るい落としの操縦課程が始まる。

喜びをかみしめることができる時間はほんの少しだけだった。