戦闘機パイロットの夢を追いかける青春物語

戦闘機パイロットになる夢を追いかける青春物語

防衛大学校物語 第4 -防衛大受験を宣言-

防大受験をクラスの親友に告白した日のことをよく覚えている。

T君は、数学が得意で数学の点数が伸び悩んでいた私に対し、よく放課後の図書館で「家庭教師役」を買って出てくれた。

ある日の午後、私とT君は、学校から帰る途中に新緑が芽吹く河原の土手に座り込んで、たわいもない会話をしていた。

その時私はT君に「防衛大に行って、戦闘機乗りになるんだ!」と話した。

街を走るカーキ色のジープやトラックはよく見かけるが、自衛隊の飛行機も見たことのない若者が戦闘機乗りになりたいと言うこと自体、突拍子もないことだった。

T君は、私の「宣言」を素直に受け入れてくれた。そしてT君自身も医学部に行って医師になりたい私に語ってくれた。

高校卒業後、T君とは年賀状を交わす程度のつながりがあったが、それも30歳を過ぎる頃には途絶えてしまった。

いつだったか、別のクラスメートからT君が医師になって、現在は「国境なき医師団」の一員として活動していることを聞いた。

医師の世界は詳しくないが、国際的な学会で研究成果を発表するなど忙しく世界中を飛び回っている者、自分のクリニックを開業した者、医局からの指示によって地方の小さな病院を転々としている者など、医師の世界にも「勝ち組」「負け組」というものがあるらしい。

国境なき医師団として国際貢献活動に従事するT君は果たして何組なのだろうか?

いずれにせよ私にとってT君は、高校時代のスマートで優しいイメージのままである