戦闘機パイロットの夢を追いかける青春物語

戦闘機パイロットになる夢を追いかける青春物語

防衛大学校物語 第132 -小松F-15ミサイル誤射事故-

とんでもない事故が起こった。

隣の飛行隊でアラート待機中の訓練でF-15戦闘機が僚機のF-15を搭載していた実弾で撃ち落としてしまったのだ。

撃ち落としたパイロットは防大2学年先輩のHさんだった。

Hさんは、温厚で後輩からも慕われていた先輩で、よく私たち後輩を連れて飲みに誘ってくれた仲だった。

幸いにも撃ち落とされた方のパイロットは緊急脱出して、近くで操業していた漁船に助けられ、命に別状はなかった。

アラート待機中の戦闘機は、よく実弾を搭載したまま訓練を行っていた。

私たちパイロットの立場からすると、実弾を搭載していることを失念して、発射操作を行ってしまったのではないか?と疑っていた。

このあり得ない事故の調査は、機材の故障も疑われたため1年ほどかけて慎重に行われた。

約1年後、Hさんの人的ミスだったとして、Hさんはパイロット資格をはく奪されて、情報幹部として新たな道を歩み始めた。

 

この事故以降、実弾を搭載する場合、マスター・アームスイッチや発射ボタンやの周りに幾重のセーフティガードが取り付けられて、絶対に人的ミスで不時発射しない手段がとられるようになった。

しかし、現場のパイロットからは、有事で敵と不意遭遇した場合、セーフティーガードを外すのに時間がかかり、敵に撃墜されてしまうのではないかという危惧の声が漏れていた。