戦闘機パイロットの夢を追いかける青春物語

戦闘機パイロットになる夢を追いかける青春物語

防衛大学校物語⑪ -着校前夜-

3月末、まだ雪の残るふるさとに別れを告げ、飛行機で羽田空港に向かった。

明日が防衛大着校日なので、今日は防衛大近くにある国家公務員保養施設の走水荘まで向かう予定になっていた。

羽田空港からはバスでまず横浜駅に向かい、横浜駅からは京浜急行に乗って横須賀まで向う予定となっていた。

しかし、ここで一つ問題が発生した。

駅のホームで横須賀行の電車を待っていると、「快速特急」、「急行」、「普通」と次々に色々な電車がやってくる。

田舎育ちのため、このような電車に乗ったことがなく、「快速特急」に乗ると特急料金は払わなければならないのではないかと、不安になってきたのだ。

何本かの電車をやり過ごし、ついに「普通 浦賀行」の電車に飛び乗った。

これなら特急料金を払わなくてもいいだろう、と。

快速特急ならば1時間程度で目的地に到着するのに、横浜駅から浦賀駅までの各駅停車は当然時間がかかった。

だんだん日も暮れ、電車の乗客もほとんどいなく、自分だけとなってしまった。

窓の外には見慣れない土地の夕暮れの風景が流れていく。

はたしてちゃんと到着できるだろうか?

掲示されている路線図を何度も見ながら、不安な気持ちは大きくなっていった。

何とか浦賀駅に到着し、走水荘までタクシーで行った。

防衛大の裏手、小原台の端っこにひっそりとたたずむ走水荘に到着すると、同じような新入学生らしき者たちがいた。

その日は、大広間のような座敷で、他の者たちと雑魚寝のような形で床に就いた。

窓からは春の生暖かい風と共に、今まで聞いたことのない海の音が聞こえてきた。

いよいよ明日からだ。