戦闘機パイロットの夢を追いかける青春物語

戦闘機パイロットになる夢を追いかける青春物語

防衛大学校物語 第30 -アメフト合宿-

あれだけ待ち焦がれた夏休みなのに、実家で過ごす時間は案外退屈なものだった。

地元で過ごした夏休みもあっという間に終わってしまった。

実は防大の夏季休暇は8月の1か月間ある。

しかし、8月にそれぞれの部活が夏合宿を行うので、当然、故郷で過ごす期間は短くなる。

最悪なのは夏合宿が2週間あるアメフト部やラグビー部であった。

丁度、お盆の真っ最中に私は両親に空港まで見送られ、防大のある横須賀に向けて出発した。

 帰校すると、アメフト部員やラグビー部を除き、校内にはまだ誰もいない。

普段は、別々の隊舎に寄宿しているが、このときだけ、部員は1つの建物に集まり2週間一緒に寝泊りする。

普通の大学生なら涼しい信州などで合宿をするのが普通だが、防大アメフト部はいつものグランド、いつもの隊舎で過ごすのである。

一年生は、初めて防具を装着し、走法や重いマシーンを押す基礎的な練習が中心だった。

それでも、真夏のグランドは40℃以上にもなる。

熱射病で倒れる者が続出した。

翌朝は夏バテで食欲もない。

両太ももの筋肉痛でトイレでもかがめない。

それでも1年生が皆で乗り越える楽しみがあった。

アメフト部には、上下関係はない。

むしろ4年生が一番早くグランドに来て、重いダミーを運ぶのも4年生が率先して行う。

一番きつい練習をするのも4年生である。

1年生には課されない夜練習を終えた泥まみれの4年生が足を引きずりながら、部屋に帰ってくる。

そして部屋長として私たちの面倒を見てくれる。

今の私のリーダーシップはそういったアメフト部の先輩たちを見て培われたといっても過言ではない。