戦闘機パイロットの夢を追いかける青春物語

戦闘機パイロットになる夢を追いかける青春物語

防衛大学校物語 第31 -チンピラ監督-

アメフト部の監督は、民間人である。

横須賀市で幼稚園を運営する園長をやっていた。

しかし、その風貌は園長先生とは程遠く、今で言うところの、反○そのものである。

顔は日焼けして黒く、頭髪は茶色のパーマである。いつも真っ赤なジャージを着て、派手な色のバイクでやってくる。

見た目だけでなく、その言動も凶暴だった。

昔、練習中にクモ膜下出血で倒れた部員がいた。

監督は、病院に見舞いに行くなり「いつから復帰出来るんだい!」と言い放ったという伝説が語り継がれている。

また、間違えて監督の足をスパイクで踏んづけた主将が、おもいっきりぶん殴られている所を見た事がある。

私はそれ以来、他人の足を間違えて踏んだ時は、大声で謝る癖が付いたほどだ。

グランドでいつもショートホープを吸いながら、厳しい視線を選手たちに向けていた。

これでも園児には人気者だと聞いて耳を疑った。

でもアメフトの指導は天下一品だった。

アメフト経験者はほとんどおらず、皆、素人同然である。

しかも、毎日規則正しい集団生活をしていると、体型も皆同じシュッとなり、太ることも難しい。

「低く、速く」が防大アメフトの生命線だった。

徹底して基礎練習を繰り返して、この低く、速くを体現した防大は関東2部リーグ上位にあった。

あの顔はトラウマ級である。

忘れられない。