アメフト部の監督は、民間人である。
横須賀市で幼稚園を運営する園長をやっていた。
しかし、その風貌は園長先生とは程遠く、今で言うところの、反○そのものである。
顔は日焼けして黒く、頭髪は茶色のパーマである。いつも真っ赤なジャージを着て、派手な色のバイクでやってくる。
見た目だけでなく、その言動も凶暴だった。
昔、練習中にクモ膜下出血で倒れた部員がいた。
監督は、病院に見舞いに行くなり「いつから復帰出来るんだい!」と言い放ったという伝説が語り継がれている。
また、間違えて監督の足をスパイクで踏んづけた主将が、おもいっきりぶん殴られている所を見た事がある。
私はそれ以来、他人の足を間違えて踏んだ時は、大声で謝る癖が付いたほどだ。
グランドでいつもショートホープを吸いながら、厳しい視線を選手たちに向けていた。
これでも園児には人気者だと聞いて耳を疑った。
でもアメフトの指導は天下一品だった。
アメフト経験者はほとんどおらず、皆、素人同然である。
しかも、毎日規則正しい集団生活をしていると、体型も皆同じシュッとなり、太ることも難しい。
「低く、速く」が防大アメフトの生命線だった。
徹底して基礎練習を繰り返して、この低く、速くを体現した防大は関東2部リーグ上位にあった。
あの顔はトラウマ級である。
忘れられない。