戦闘機パイロットの夢を追いかける青春物語

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防衛大学校物語 第43 -東大生のスゴイと残念-

アメフト部では2年からレギュラーとして試合に出場した。

春には東大、京大、警視庁と定期戦が行われた。

当時甲子園ボウルで優勝した京大との定期戦のため京都に遠征した。

試合内容はよく覚えていないが、餃子の王将ででこんなうまいものがあるのかと驚いた。

警視庁機動隊チームは護送車のようなおどろおどろしい車で防大にやってきた。

東大との定期戦で忘れられないことがある。

残り5ヤードで私へのタッチダウンパスだった。

セットすると、私の対面の東大生が軽口をたたいた。

「さあ来い、防衛庁」と。

自衛隊を馬鹿にされたと思った。

防大に入学して以来、旧軍の反省から「国民に迷惑をかけてはいけない」や「シビリアンコントロール」について徹底的に教育されてきた。

将来、防衛庁の官僚となって自衛隊を統括する立場にある東大生から自衛隊に対する軽口をたたかれたことに対し、19歳の私はすごく動揺した。

その動揺のせいか、イージータッチダウンパスだったが、胸でボールを弾いて落としてしまった。

ボールをキャッチできなかったことより、東大生を残念だと思った。

実はその試合で東大生が倒れ、救急車で搬送された。

スポーツでの事故とはいえ、責任を感じた防大の主将と副将がその選手が入院する病院を見舞ったりしたが、数か月後に命を落とす結末となった。

翌年も定期戦が行われ、試合後にレセプション(一緒にお酒など飲み歓談する)が行われた。

東大生にとってチームメートが防大生に殺されたという気持ちがあってもおかしくなかった。

しかし、レセプションの間、東大生たちは一言も亡くなったチームメートの事には触れなかった。

東大生はスゴイと見直した。

その後、東大チームは関東1部リーグに常連校として定着した。