戦闘機パイロットの夢を追いかける青春物語

戦闘機パイロットになる夢を追いかける青春物語

防衛大学校物語 第75 -60km行軍と戦闘訓練-

防大生の時とはうって変わって、私は学科教育や訓練で良い成績をとるため努力した。

学科の試験前には予想問題を作成するなど、他の誰よりも準備して臨んだ。

駅伝走やラグビー大会など区隊対抗の競技会においては、積極的にチームのリーダーとして活躍した。

防大とこの幹部候補生学校での成績を踏まえ幹部序列が決まる。

幹部自衛官の昇進はこの幹部序列の順番によるから、成績は自衛官人生を左右する重要なもの、と言っても過言ではなかった。

私が点取り虫になったというよりは、防大時代、全精力をアメフトに注いでいたが、幹部候補生学校では、そのエネルギーを向ける先が課程での教育や訓練しかなかったというだけだった。

幹部候補生課程でのビッグイベントの一つに60㎞行軍があった。

ヘルメットや半長靴など装備をした状態で夜間も寝ないで60kmを走破するのである。

この時、「歩きながら寝る」という状態を初めて経験した。

隊列が緩やかなカーブを右に進んでいるのに、寝ながら歩いているため自分だけ直進しているのである。

はっと気づいて、もとの隊列に急いで戻る。

最後の数時間は、皆、慣れない半長靴の靴ずれで苦悶の表情を浮かべる。

歩き続けることができなくなり、結局、随伴する車にピックアップされる者を出てくる。

翌日、足を引きずりながらも私は60㎞を踏破した。

その後、特別に許可された入浴は格別のものとなった。