私たちコースBよりも数カ月先んじて同期のコースAが飛行訓練を行っていた。
ある日、コースAのK3尉が小倉に飲みに行って、女性を巡り店にいた客の若い男と喧嘩となり、刺されるといった事件が起こった。
その男は高卒の若い自衛官だった。
K3尉は被害者であったが、幹部自衛官ともあろうものが若い隊員と揉めて事件にまで発展したとして、部内的にK3尉も処分されることになった。
結局、K3尉は退職するハメになったが、その影響は残されたコースAの同期に波及した。
ただでさえ、厳しい教官が多かったが、コースAに対する指導は一層厳しくなっていった。
ある時、飛行隊の建物の中央階段を上がると、2階の踊り場にコースAの数人が廊下で正座させられているのに出くわした。
その中には、幹部候補生学校で一緒に商社マンを目指したものの、彼女の妊娠が発覚したため自衛隊にとどまったK3尉もいた(第71および第73参照)。
私と目が合ったK3尉はバツが悪そうにうつむいて視線をそらした。
コースAは、毎週一人ずつパイロット学生をクビになっていく悲惨な状況だった。
こんなのを目の当たりにすると、来週は自分がクビになるのでは…と思うようになる。
真冬のどんよりした低い雲と玄界灘に吹雪く風が一層暗い気持ちにさせた。