幹部候補生学校に入校してから仲良くなった同期にT候補生がいた。
T君は、その容姿がドラえもんのジャイアンによく似ているので、皆から「ジャイ」と呼ばれていた。
この男、凄い特技を持っていた。
それは、凄腕のナンパ師だった。
毎週末、大阪ミナミにあるナンパのメッカ、通称「ナンパ橋」に出撃しては、その戦果を誇らしげに皆に自慢していた。
こんな不男かなぜモテるのか不思議でならなかった。
ある時、なぜいつもナンパが成功するのか尋ねたことがあった。
T君は「100人声をかけて1人でも成功すれば良いと思っている」と私に語った。
不屈の精神力の持ち主だった。
そのなT君にもバチが当たった。
ある日、T君と2人で夕暮れの平城宮跡を散歩していたら、突然T君は淋病にかかったことを告白した。
文字通りT君は少し寂しそうだった。
これには後日談があり、このことで私は大失敗をしてしまった。
T君の部屋を訪れた私は、他の同居人がいる中でT君に「淋病、治った?」と大声で言ってしまったのである。
後で聞くと、このことはT君と私だけの秘密で、T君は気を遣って同部屋の候補生には内緒にしていたのだと言う。
T君にはすまないことをしたと思っている。
でも、調子に乗っていると天罰か下ることを知った。