どこにもヤバイ教官はいるものである。
松島基地での戦闘機操縦課程にも名物教官がいた。
しかも私たちのコースの副担任だった。
B1尉は、頭皮も薄く、とても30才位とは思えない容姿をしていた。
本人曰く、ブルーインパルスに行かないか?と誘われたが、「痩身エステが条件なら」と断ったとか。
いつも不健康そうなゲップをしていた。
そして何よりも、沸点が極めて低く、すぐにブチ切れるのが特徴だった。
浜松基地で「任侠教官」として恐れられていたT1尉と同期で、彼が同期のビリ2で、自分がビリ1だと自慢げに話していた。
ある日、本来なら私の単独飛行だったが、天候が悪くB1尉との教官同乗フライトとなった。
訓練前にB1尉は私に「ソロフライトのつもりでやれ!俺は何も言わない」と言った。
しかし、離陸して車輪を格納した瞬間から、B1尉は後席から絶えず怒鳴りまくっていた。
ずっと罵声を浴びせられ、キチガイを後席に乗せているのと同じだった。
一瞬、座席の射出ハンドルを引いて、自分だけ緊急脱出してやろうかと頭をよぎるほどだった。
しかし、パイロット はどんな状況でも冷静でなくてはならない。
着陸まで気を確かに持って、メチャクチャなその訓練を終えた。
訓練後のデブリーフィングでは、B1尉の前だったが涙がポロポロこぼれ落ちてきた。
悔しくて、自分が不甲斐なくて。
訓練で泣いたのはこれが最初で最後だったような気がする。