戦闘機パイロットの夢を追いかける青春物語

戦闘機パイロットになる夢を追いかける青春物語

防衛大学校物語 第115 -ブチ切れ教官-

どこにもヤバイ教官はいるものである。

松島基地での戦闘機操縦課程にも名物教官がいた。

しかも私たちのコースの副担任だった。

B1尉は、頭皮も薄く、とても30才位とは思えない容姿をしていた。

本人曰く、ブルーインパルスに行かないか?と誘われたが、「痩身エステが条件なら」と断ったとか。

いつも不健康そうなゲップをしていた。

そして何よりも、沸点が極めて低く、すぐにブチ切れるのが特徴だった。

浜松基地で「任侠教官」として恐れられていたT1尉と同期で、彼が同期のビリ2で、自分がビリ1だと自慢げに話していた。

ある日、本来なら私の単独飛行だったが、天候が悪くB1尉との教官同乗フライトとなった。

訓練前にB1尉は私に「ソロフライトのつもりでやれ!俺は何も言わない」と言った。

しかし、離陸して車輪を格納した瞬間から、B1尉は後席から絶えず怒鳴りまくっていた。

ずっと罵声を浴びせられ、キチガイを後席に乗せているのと同じだった。

一瞬、座席の射出ハンドルを引いて、自分だけ緊急脱出してやろうかと頭をよぎるほどだった。

しかし、パイロット はどんな状況でも冷静でなくてはならない。

着陸まで気を確かに持って、メチャクチャなその訓練を終えた。

訓練後のデブリーフィングでは、B1尉の前だったが涙がポロポロこぼれ落ちてきた。

悔しくて、自分が不甲斐なくて。

訓練で泣いたのはこれが最初で最後だったような気がする。