戦闘機パイロットの夢を追いかける青春物語

戦闘機パイロットになる夢を追いかける青春物語

防衛大学校物語 第98 -韓国軍から怒られる-

訓練空域は、北九州の北方にあった。

晴れた日にはすぐ近くに韓国が見える。

ある日、ソロの4機で訓練空域に向かった。

それぞれソロで課目を行い、そろそろ帰る時間になった時、突然、誰かが国際緊急周波数で呼ばれた。

よく聞くと、「ニッポンノ クンレンキハ、スグニ ミナミニ イキナサーイ」と韓国軍のレーダーサイトから南に行けと言われているらしい。

実は、同期のI3尉が宙返り課目を繰り返しているうちに、基地の方角が分からなくなり、間違えて北側、つまり韓国側に帰ろうとしたらしい。

全く、間抜けな話である。

練習機は古く、大きな姿勢変化を継続すると、誤差が出る傾向があった。

このため、南と北が分からなくなったのだろうか?

それにしても太陽の位置などからどちらが南かわかるものだ。

本当に韓国の方に飛び続けていると、韓国空軍の戦闘機にスクランブルをかけられてしまう。

しかし、韓国軍のレーダーサイトには流暢?な日本語を話す軍人がいることは意外だった。

もちろん、着陸後、I3尉は教官から大目玉を喰らうことになった。

私たち同期は彼を冷やかしながら慰めてあげた。