コースAの状況は悲惨で、週替わりメニューのように毎週誰かがクビになっていった。
そんな状況をまじかで見ていると来週は自分の番かと不安になる。
夕暮れの遠賀川の堤防を一人で歩きながら、だんだん気分が落ちていった。
防大時代から月に一度くらいの頻度で実家の両親に電話をして近況を伝えていた。
電話口に出るのはもっぱら母親だった。
この日の電話で私は母親に「もうパイロット辞めたい」と思わず漏らした。
両親がどんなにがっかりするだろうと考えた。
母親は、私の言葉に対し、「あなたの好きにしなさい」と語った。
世の中の親といものは、子供から辛いから辞めたいと言われれば必ず「あなたの好きにしなさい」と言うのだろうか?
本当にそれは正しいのだろうか?
少なくとも人生経験が長い親が、これまでの人生経験や長期的な視点から、「もう少し頑張れ」と助言してもいい気がする。
それとも、最終的には、本人の気持ち次第なのだから、親がいくら「頑張れ」と言っても無駄だからなのか?
母親の私に対する優しい気持ちだけは感じた。
結局、私は、自らパイロットを辞める決心もつかず、そのまま飛行訓練を続けた。