戦闘機パイロットの夢を追いかける青春物語

戦闘機パイロットになる夢を追いかける青春物語

防衛大学校物語 第137 -空に流れる銀の川-

無人標的機に改造されたUF-104に対するミサ射撃訓練は、あまり順調とは言えなかった。

とにかくUF-104を運用するための飛行制限が多かった。

横風10ノットを超えるとその日のミッションは中止となった。

また、離陸できたとしても訓練空域を民航機が横断する情報が入れば、ミッション中止となった。

UF-104はリモートで着陸させられた。

私は一番最初の射撃編隊の後席要員だった。

毎日、今日こそは射撃ができるかと思っていたが、結局、連続14日間ミッション中止となった。

射撃編隊を入れ替えてくれれば気が楽だったが、ずっと最初の射撃編隊だったため、緊張しっぱなしだった。

そして、15日目にようやく訓練の条件が整った。

無人機のUF-104は、離陸滑走の前のエンジン・チェックで「パオーン」と象の鳴き声のような音を出す。

これから撃ち落とされるUF-104の悲しい鳴き声のようだった。

前方から機動しながら直進してくるUF-104に対し、レーダーでロックオンして空対空ミサイルを発射する。

命中だ。

そのまま着弾したと思われる地点まですすむと、自機のすぐ左下を「サー」って銀の川が流れているのを見た。

UF-104の破片である。

実戦ではミサイルを発射したらすぐに反転しないと、撃墜された敵機の破片を吸い込む危険性があった。

危なかった。

これは貴重な教訓だった。

地上で墜落していくUF-104のコックピットから撮影したビデオを見た。

クルクルとスピンしながら真っ逆さまに落ちていき、海面への衝突と同時にビデオは途切れていた。