戦闘機パイロットの夢を追いかける青春物語

戦闘機パイロットになる夢を追いかける青春物語

防衛大学校物語 第103 -同部屋のY君-

パイロット学生の間は、基地の中のパイロット専用の寮に居住する。

部屋は2人部屋で、今回は防大時代から同じクラスだったY君と同部屋になった。

Y君は、穏やかな性格で、地道に努力するタイプである。

防大生の時、週末に自室で英語の勉強を続けるY君に対し、私は「自衛官が英語を勉強する必要があるのか?」と茶化したことがあった。

しかし、それからすぐに自衛隊国際貢献活動として海外で任務活動を行うことがどんどん増えていった。

Y君に先見の明があったというわけだ。

しかし、Y君には、パイロット学生が必要とする「要領の良さ」が少し欠けていた。

短い期間でたくさんの知識を身に付けていかなけらばならないパイロット学生にとってそれは致命的であった。

毎回のフライトで、Y君は教官から「のろま」とののしられることがよくあった。

パイロット学生の評価は絶対評価ではあるが、各課程で成績最下位の者はほとんどがクビになっていった。

そしてY君のフライトの成績はいつも最下位だった。

そんな逆境に立たされても、気にしないのがY君のスゴイところでもあった。

のろまのカメのようだった。

私とY君は、基本操縦課程の半年間、ほとんど遊びに行くことは無かった。

週末の昼になると基地正門の近くにあるスーパーに出かけては弁当を買って、また基地に戻ってずっとフライトの勉強をつづけた。

2人とも要領の悪いところは似た者同士だった。