戦闘機パイロットの夢を追いかける青春物語

戦闘機パイロットになる夢を追いかける青春物語

防衛大学校物語 第108 -事業用操縦士免許取得のため-

この課程のクライマックスは、国土交通省が発行する事業用操縦士免許取得のための実技試験である。

ちなみに学科試験は、この前の課程ですでに受験してパスしていた。

この学科試験に2度落ちるとパイロット学生はクビになる。

過去問題を見て傾向と対策をしっかりやっておけばまず落ちることはないが、たまに2回不合格になる者がいる。

私たちは、そのような者を「バカ免(頭が悪くパイロットをクビになる者)」と呼んだ。

事業用操縦士免許を取得するためには、気象に関する専門的な知識も必要とされる。

このため、毎朝、気象予報官が飛行隊の全パイロットに対して実施する気象ブリーフィングを予報官に代わってパイロット学生が行う。

朝5時に気象隊を訪れ、その日の天気図など気象データーから気象ブリーフィングの準備を行う。

パイロットは気象ブリーフィングの本質なんて理解していない。

また、付け焼刃な知識であるため飛行隊全体で実施する気象ブリーフィングは支離滅裂なものとなることがほとんどであった。

一番やっかいなのが、実フライトの前に行われる試験官による「口頭試問」である。

試験官は国土交通省の認定を受けた教官操縦士である。

浅はかな学生の知識はすぐに見破られてしまう。

この口頭試問にしっかり答えられないと実フライトが中止になることもある。

新しい科目の勉強と並行して、事業用操縦士免許のための勉強が毎晩遅くまで続くのである。