戦闘機パイロットの夢を追いかける青春物語

戦闘機パイロットになる夢を追いかける青春物語

防衛大学校物語 第126 -芸は身を助ける-

私が赴任した当時の飛行隊長は特徴的な人だった。

フライトに対しては厳しかったが、一方、地上に降りるとユーモアにあふれる隊長だった。

私はいつも隊長から「緻密な準備、ずさんなフライト」と大目玉を食らっていたが、宴会芸だけは一目置かれていた。

宴会芸と言っても実にハレンチな芸であるが、その斬新さに同僚や先輩から人気があった。

隊長から直々に「今度の飛行隊創設パーティーで芸をやるんだろうな」と念をおされる。

そうなると後席要員として24時間のスクランブル待機に就く時もロシア機どころではなく、待機所でずっと宴会芸のネタ作りが始まる。

パーティーでは大物国会議員の前でハレンチ芸を披露したり、輪島市の民宿では、女体盛りならぬ、「男体盛り」を披露した。

給仕のおばちゃんにも食べてもらった。

「おばちゃんも食べて、食べて」

「食べてくれないと終われないから」

「違う違う、それ僕のウインナー」

などど、私の馬鹿馬鹿しい芸にみんなで盛り上がった。

こうして私はフライトはイマイチだったが、飛行隊で生き延びることができたような気がする。

芸は身を助けるとはまさしくこのことであった。