フライトに対しては厳しいが、飛行機から離れると非常にユーモラスなT隊長から学ぶことは多かった。
S先輩が2機編隊長練成訓練中だった。
編隊着陸の際、僚機に余裕を持たせるために自機は滑走路の端ギリギリに接地しすぎてしまい、滑走路灯をランディング・ギアで壊してしまった。
一歩間違えれば大きな事故につながりかねなかった。
当然、S先輩はショックで落ち込んでいた。
そして悪いことに週末には飛行隊のゴルフコンペが計画されていた。
S先輩は参加を自粛しようか迷っていた。
それを察知した隊長は、「コンペに参加しないと編隊長練成訓練を止めるぞ!」とS先輩に檄を飛ばしたのだ。
事故には「前向きな事故」と「後ろ向きの事故」がある。
一生懸命やった結果、下手クソがゆえに失敗してしまった場合は「前向きな事故」として、当該者ではなく組織がサポートをすべきである。
一方、飲酒運転などは「後ろ向きの服務事故」であり、悪いと分かっていて事故・事件を起こしてしまった場合は、当該者に対して組織は厳しく断罪すべきである、という考えである。
一生懸命やった結果、滑走路灯を破壊してしまったんだから、くよくよするな。
皆とゴルフでも楽しんで、来週から気分一転、編隊長練成訓練を頑張れ、という隊長なりの優しさだと感じた。
今でも私はこのT隊長の考え方を意識して行動している。