全国の飛行隊が実力を競う「戦技競技会」というものがある。
さながら飛行隊対抗の運動会のようなものである。
このメンバーには飛行隊のエース級パイロット が選抜される。
私も候補者の一人であったが、いつも失敗ばかりしている私は、当然メンバーに選ばれることはなかった。
その代わり、硫黄島でのミサイル射撃訓練という臨時編成の移動訓練メンバーに選ばれてしまった。
古いF-104戦闘機を無人標的機に改造し、これに向かって戦闘機から実弾ミサイルを発射し、ミサイルの命中精度を検証するという訓練だった。
戦技競技会のメンバーになれずに、失敗ばかりしている私は、硫黄島に「島流し」になったような気持ちだった。
兎にも角にも、準備期間を含め約3か月間、飛行隊を離れ、移動訓練隊に配属となった。
硫黄島には延べ1か月半滞在することになる。
子供の頃、読書感想文を書くため、本屋で適当に一冊の本を購入した。
その本のメインは原爆投下に関する読み物だったが、もう一編は硫黄島の日本軍指揮官だった栗林中将の活躍を記した内容だった記憶がある。
その頃はあまり気にしていなかったが、こうして自衛官となって自分が硫黄島に行くことになったのは何かの運命だろうか?
兎にも角にも、こうして移動訓練隊のメンバーとして訓練の準備を進めるため忙しい日々が続いた。