戦闘機パイロットの夢を追いかける青春物語

戦闘機パイロットになる夢を追いかける青春物語

防衛大学校物語 第135 -激戦地としての硫黄島-

硫黄島訓練では米軍艦載機訓練用に建設された米軍人用の宿舎に寝泊りする。

各部屋の入口ドアの前に紙コップに水を一杯に入れて置いておく習慣がある。

それは、太平洋戦争の末期、日米が戦い、大勢の軍人が命を落とした硫黄島ならではのものである。

当時、日本軍は暑い壕で水も食料も乏しい中、長期間持久戦を戦い、玉砕した。

現代においても硫黄島には日本軍将兵の亡霊が付近をさまよっているという噂が絶えない。

部屋の前に水を供することによって「どうか、このお水を飲んでください。そして、どうか私の部屋には入ってこないでください。」という意味が込められているそうだ。

廊下から見ると、各部屋のドアの前に、ポツリ、ポツリと水が入った紙コップが置かれている異様な光景が現れる。

硫黄島に来る前に、先輩パイロットが「硫黄島には、日本兵のお化けが出るらしい」と言っているのを聞き、そんな馬鹿な、と軽く聞き流していた。

しかし、実際に硫黄島での訓練が始まると、毎晩、怖くて怖くてたまらなかった。

1人部屋だが、いつも焼酎を飲んでベロベロになってから、部屋の照明を点灯したまま眠りについた。

そうでもしないと怖くてとても一人では寝られないのだ。