戦闘機パイロットの夢を追いかける青春物語

戦闘機パイロットになる夢を追いかける青春物語

防衛大学校物語 第136 -硫黄島の女王様-

移動訓練隊は全国からさまざまな職種の隊員が参加し、100名以上の大所帯となった。
今回、初めて女性隊員1名を同行させた。
その女性隊員は一応独身で、性格はものすごく良いのだが、容姿は普通なら「猫もまたいで渡る」ような残念な感じだった。

しかし、硫黄島に来ると立場が大きく変わった。

島に女性が一人しかいないという状況になると、男性隊員たちは何かソワソワした気持ちになり、その女性隊員を巡って争奪戦が始まるのである。

課業時間外や休日は、皆、島内にジョギングに出かけたり、ゴルフを楽しんだり、夜は思い思いに酒宴を楽しんだりする。

ある年配の隊員は、この女性隊員を誘って二人ででジョギングに出かけることに成功した。

そして、その二人の姿を見かけると、ものすごく悔しい気持ちになる。

一方、酒宴に誘ってその女性隊員が参加してくれると、自分たちがこの島の王様になったような優越感を覚えるのである。

その感覚は、単なる下世話なものとは少し違い、理性の向こう側の「生物学的な感覚」に近いものである。

つまりオスとしての感覚である。

1か月半の訓練を終えて、本土に帰ってくると、すっかりその女性隊員に対する気持ちは消失していた。

まったく不思議な体験をした。