企画チームに所属していた私には、部下的なポジションの空士長の若い女性自衛官がいた。
そのコは、顔は中くらいだか、結構なオヤジキラーで有名だった。
彼女と話をしても半歩近い感じがして、始めてあった時はドキッとさせられた。
少し前から彼女の好意を感じるようになっていた。
ある時、何故だか後輩や周りの同僚から、たまには上司と部下の2人で夕食でも行ってきたら?といたずらに煽られることがあった。
乗せられたためか、結局、夕方、車に乗って2人で近くのレストランに行くハメになった。
デートをしているみたいで不思議な感じである。
夕食を終えると、メキシコの街の夜景が綺麗な丘の上に向かうのが接遇コースだった。
私は彼女を助手席に乗せて丘の頂を目掛けて運転していた。
もう完全にデートである。
丘の上で車を停めるて、オレンジ色に光るメキシコの街の灯りをベンチに座って2人でぼーっと眺めていた。
あとは彼女の肩に手を乗せるだけである。
彼女もそれを待っているかのようだった。
しかし直前に我に返った。
私はまだ真面目が残っていたのだ。
日本にはお腹を大きくした奥さんが不安な思いをして私の帰りを待っている。
そう思うと私は「じゃ、帰ろうっか?」と彼女に囁いた。
2人は何も間違いを犯すことなく無事生還した。
一度、からかって「お前なんて、ウダツの上がらないパイロットと結婚するのがお似合いだよ」と彼女に言ったことがある。
それから何年もして、彼女は一般大卒のかなり成績優秀なパイロットと結婚した。
玉の輿である。
今思えば、これで良かったのである。