戦闘機パイロットの夢を追いかける青春物語

戦闘機パイロットになる夢を追いかける青春物語

防衛大学校物語 第176 -ボクシング部入部-

士官学校に来て一年も経つと少し余裕が出てきて、何か課外活動でもやりたくなる。

私が防衛大でアメフトの経験者であったとしても、士官学校のアメフトチームに近づくのはためらった。

大学アメフトは単なる部活ではなく、もはやビジネスと言えるからだ。

毎試合、億単位の収入があり、学校のPRのため勝利することが絶対条件だった。

このため監督は部外から多額の契約金を払って招聘するのが通常である。

そこで私は、今までテレビでしか見たことのないボクシング部の門を叩いた。

監督は、私の年齢を心配してスパーリングはしないという条件で入部を認めてくれた。

こうして私は士官候補生らと一緒に毎日トレーニングに汗を流した。

初めて間近でボクシングを見て愕然とした。

学生といえども日本人の大人より体格のいい学生のフックなんか喰らったら即死である。

スパーリングなんて絶対に出来ないと思った。

いいことといえば、毎回、体重測定もあり、私の体重も日に日に減少していったことであった。

一年生の体育の授業にボクシングがある。

よく鼻から流血する事態が起きるが、戦場で血を見ても動揺しないメンタル作りも目的らしい。

12月頃になると、FRAIDAY NIGHT FIGHTというクラス対抗の試合が行われる。

ここで勝ち上がった各体重別のチャンピオンがインターカレッジで対外試合を行う仕組みである。

チャンピオンは全校生徒の代表なので全米大会でもほぼ優勝するのだ。